鍼灸師を目指す脱サラ男のブログ

元サラリーマンの中年が鍼灸師合格までを綴る日記

甲子園のピッチャーの肘・肩のメディカルチェックについて

甲子園も、ベスト4と決勝を残すのみとなっている。これまでに何度か野球のケガについて書いているが、今回は甲子園の開幕前の医者によるピッチャーの肘・肩のメディカルチェックについて述べることとする。

 

よく知られるように、夏の甲子園では、現在ではピッチャーがメディカルチェックを受けることが必要になっている。一応、重症の場合には、登録が取り消される場合もあるという。

 

しかし、問題なのは、その方法と運用である。診察は「レントゲン写真の撮影など」とのこと。*1

 

別のサイトなどを見ると、理学療法士による関節可動域のチェックやセルフ・コンディショニングの指導などもあるという。*2

 

これらの取り組み自体は決して否定的に捉えるつもりはない。問題を2つ指摘する。

1つ目は、この取り組みが現状としてどれほど有効か。

2つ目は、都道府県大会レベルの日程の問題はないか?ということである。

 

前者について、私は概ね否定的には考えていないが、好投手の保護を完全にできているかといえば、不十分だと考えている。

 

例を2つ挙げる。

 

1つは、一昨年の甲子園で、盛岡大付属のエースとして東海大相模を倒した松本君(現ソフトバンク)。彼は、東海大相模を倒した次の対戦カードとなった敦賀気比戦で、朝から肘が痛かったという。さらに、岩手県大会の時点で痛みがあったという。*3

 

そして、もう1つは、今年の横浜と履正社の試合で、横浜の先発ピッチャーの石川君である。石川君は、序盤から降り出した大雨で試合が40分中断した際に、肩が冷えて痛みが生じたという。

よくよく内容を見ると、既に肩を痛めていて、この試合では痛み止めを打って試合に臨んでいたそうだ。しかし、中断で肩の痛みが再発し、試合再開後にはどうにもコントロールができなくなってしまったとのことだった。*4

 

この2つの事例で明らかなのは、2つ。1つは、各地の都道府県大会の時点で痛めていたこと。もう1つは、メディカルチェックを通っていたこと。

 

都道府県大会については、ベスト16~ベスト8くらいから急激に過密日程になってしまう。とりわけ、ベスト4と決勝は連投か中1日しか開けていないのが普通である。

先に紹介した松本君の例に戻ると、松本君はこの時点で肘が悲鳴を上げていた。だとすれば、それを緩和するための方法が日程的に考えられないかを検討するのが大人=(各地の都道府県も含めた)高野連側の姿勢であると思う。

この点につき、私の考えは、都道府県大会の時点で全体の日程を1週間程度緩和し、ベスト16以降はもっと余裕のある日程を組むべきだ、ということである。

これを実行するだけで、都道府県大会で悲鳴を上げてしまう選手はかなり減るはずである。

私のこの考えは、大会の序盤については従来通りで問題はないとする。また、アマチュア野球の場合、特定の好投手に負担が集中してしまう現状を考えても、現場でも実行しやすい方法と考えている。

本来的には、投球制限を設けるべきだと考えているが、これは現場からあまりにも反発が大きいことが予想できる。それならば、大会期間の延長(より正確に言えば前倒し)を都道府県大会の時点で実行すれば済む。

メディカルチェックの問題について、いくつかの記事を読む限り、現場では好意的に受け止められているようである。私も、取り組みについては再三述べるように、とても意義があると思っている。

 

しかしながら、実際に登録を取り消された選手はおらず、松本君と石川君の例で言えば、常識的に出場をさせてよかったのか、診断も含めてかなり疑問がある。

彼らのような症状で見過ごされたのであれば、今の取り組みではメディカルチェックは無意味ではないか?と感じてしまうのだ。

結論。甲子園でのメディカルチェックが悪いとは思わないものの、以下に挙げるようないくつかの条件整備が必要だと考えている。

1つは、都道府県大会の日程の見直し。これは、甲子園での問題と違って、あまりややこしい問題は生じにくいはずである。

2つは、普段からケガの予防を心がけ、無理をしない・させないこと。選手の立場からすれば、どうしても無理をしたくなってしまうもの。そこを、指導者が普段から無理をさせないことが大事である。

 

この点につき、試合中に厳しい状況で監督が「行けるか?」などと声をかけるのは論外である。

 

そもそも、「無理です」と答えたらその後出番を失うのが一般的な状況である。監督と選手は対等平等の関係ではないという前提を把握すべきである。

監督は、選手が健康上危ないと感じたら、選手の意向に反してでも止める責任がある。特に、スポーツ障害は、後遺症として一生付き合う必要が生じることもあるからだ。

そのためにも、選手も指導者も、普段からケガについての知識をしっかりと持つように努力すべきである。

3つは、抜本的な問題として、投球制限を導入すべきである。センバツと今大会で、秀岳館の鍛冶舎監督は継投で勝ち上がってきた。もちろん、選手は中学時代からの選りすぐりの選手たちであることは承知している。

しかし、彼らに継投のスタンスを植え付けたのは鍛冶舎さんであり、そのことで、これまでにピッチャーの公式戦での疲労度は他チームとは大きな違いがある。

これは、まだ私立と公立の一部のチームしかできないことにせよ、意識的に取り組めばできない話ではないことを示している。

考えてみれば、習志野がベスト8に入った時も継投で県大会も甲子園も勝ち上がり、昨年千葉の代表になった専大松戸も例年複数の投手陣の育成に定評がある。

そのことを、全国の野球指導者が本気になって考えるべきではないだろうか?

 

*1 asahi.com:高校野球「球児の故障、防ぐ専門医 実力上がる期待も」 - 第89回全国高校野球選手権岐阜大会

*2 甲子園メディカルサポート部 | アスリートケア

*3 高校球児の肩と肘 企業広告導入や観客席値上げで守れないか│NEWSポストセブン 私は、この記事についていくつか異論はあるものの、事実確認などはとても貴重だと思っている。

*4 横浜の左腕・石川は涙…中断が左肩痛に影響 試合後はプロ志望を表明/野球/デイリースポーツ online

 

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